債務整理をすると車は没収されてしまう?
債務整理をすると車は手放さなければならないのでしょうか?
債務整理には、任意整理・個人再生・自己破産の3つの手続きの種類があります。
この中からどの手続きをするか、また、車のローンは残っているのかなどによって車が没収されてしまうかどうかが異なってきます。
この記事では、それぞれのパターンで「債務整理をすると車は没収されてしまう?」について解説していきます。
任意整理をすると車はどうなる?
まずは任意整理をする場合です。
任意整理は、債権者(お金を貸してくれた人や会社)と債務者(お金を借りた人)による交渉で合意した内容で借金を返済していく方法で、裁判所は関与しません。
①車のローンが残っている場合
車のローンが残っていて、車を手元に残したい場合には、車のローンは任意整理の対象から外すことで車を手元に残すことが可能です。
車のローンも任意整理の対象にすると、ローン会社に車を引き揚げられてしまう可能性が高いです。
それは、通常ローンを完済するまで車の所有権はローン会社のまま(所有権留保)という契約になっていることが多いためです。
②車のローンが残っていない場合
車のローンが残っていない場合、任意整理では持っている財産を処分されることもありませんので、没収されることはないと考えてよいでしょう。
個人再生をすると車はどうなる?
個人再生は、裁判所に申立てを行い、認められれば借金が概ね5分の1程度に減額され、原則3年間で返済していく手続きです。
①車のローンが残っている場合
個人再生は任意整理と異なり、裁判所に申立てを行う手続きです。
債権者は平等に扱わなければならず、特定の債権者を手続きの対象から外すことはできません。
つまり、車のローンが残っている場合には、ローン会社も手続きの対象としなければならないため、車はローン会社に引き揚げられてしまうでしょう。
ただし、個人の運送業者など、車がなければ事業が継続できないなどの事情がある場合、裁判所の許可を得られれば車を手元に残せる可能性もあります。
詳しくは債務整理を依頼する弁護士に相談するとよいでしょう。
②車のローンが残っていない場合
車のローンが残っていない場合、後述する自己破産とは異なり、個人再生では財産を没収されることがないため、車を没収されることはありません。
ただし、個人再生をする場合には気を付けなければならないことがあります。
個人再生は借金を概ね5分の1程度に減額して支払っていく手続きですが、もし車の価値が高い場合には、その分返済しなければならない金額が高くなる可能性があります。
これは、清算価値保障の原則というもので、財産を現金に換えたときの価値が借金の総額から定められている最低弁済基準額(概ね5分の1程度)を上回る場合には、清算価値の額を返済しなければならないからです。
自己破産をすると車はどうなる?
自己破産は裁判所に申立てを行い、認められれば借金の返済を全額免除してもらえます(一部、税金や社会保険料、養育費等非免責債権と呼ばれるものについては免除されません)。
その代わり、一定額以上の価値のある財産はすべて処分されてしまいます。
①車のローンが残っている場合
車のローンが残っている場合には、やはりローン会社が引き揚げてしまいますので、車を手元に残すことはできません。
②車のローンが残っていない場合
車のローンを完済している場合に車が処分されるかどうかは、車の価値によって異なります。
車の時価(その時の市場価格)が20万円未満であれば、車を手元に残すことができます。
しかし、車の時価が20万円以上の場合には、原則として車は処分されてしまいます。
自己破産では、車だけでなく20万円以上の価値がある財産はすべて没収され、債権者への配当に充てられます。
どうしても車がないと生活や仕事ができない場合はどうなる?
どうしても生活していく上で車が必要で手放すことはできない場合には、任意整理をして車のローンを対象から外すか、自己破産や個人再生で裁判所の許可が得られれば車は処分せず手元に残すことが可能な場合があります。
ただし、裁判所も簡単に認めてくれるわけではありませんし、先述のとおり車のローンが残っている場合にはローン会社に引き揚げられてしまいます。
車をどうしても残したいからと、車のローンだけ返済してしまったり、車の名義を変えてしまうと、その後の債務整理手続きに大きな影響を与え、結局は車を処分しなければならなくなったり、自己破産の場合には免責許可が得られない場合もあります。
まとめ
債務整理をしたから必ず車が没収されてしまうというわけではありません。
しかし、多くの場合で車を手元に残すことが難しくなります。
一度債務整理をすると、その後5年~10年程度はローンを組むことができなくなるので、どうしても車を手放したくないという方もいらっしゃると思います。
個別の事情については弁護士にご相談することをおすすめします。